2024年3月に読んだ本

今月も7冊と少なめです、、、

引っ越しとか転職とか推し関連で落ち込む事があったりと、、、(切り替えるのがド下手

全然違う会社ですが書店員、続けています。ラノベ担当でしたが暫くは担当を持たなさそうです〜。それでもラノベは気になったものを読んでいきたいと思っております。

 

1.0301 藤崎翔
逆転美人
紙の本でしか出来ないミステリとして話題になっている本。
本の内容としては美女として生まれた主人公がその美しさによって悲惨な事件にあってしまったのを、面白おかしく騒ぎてるマスコミに抗議する為の告発手記、なのですが。
ミステリ部分の仕掛けにも本当にビックリでしたが、その仕掛けを抜きにしても本文の内容が面白い。
美人は得と言われるけれど、その分嫉妬を買いやすく、その美貌を活かせるくらい知力や上手く立ち回れるコミュ力が無ければ奈落へ引き摺り込もうとする腕から逃れられない…というのもなんとなく分かります。
ある1人の女の生涯としても、とても読み応えがありました。おすすめです。

 

2.0305 凪良ゆう
流浪の月
2020年本屋大賞受賞作。
お互いを必要としている二人が、その出会い方の特殊性から誘拐犯とその被害者として世間から扱われる話。
誘拐犯とその被害者の愛というと美女と野獣という童話を思い出す。
ストックホルム症候群といって、加害者である誘拐犯でも、極限状況で優しくしてくれるから被害者は好意を持ってしまう…という例があって、よくその見本として名前が出される事が多い。
容姿が良かったから、という理由で邪魔されない「真の絆」を描きたかったから王子は野獣という姿なんだろう。家族が提唱するベルがケモナーだったという説も面白いけど。
話は戻って、もし、周りにロリコンの誘拐犯とその被害者がいて「私達は正常で、お互いが必要だから一緒にいるんです」と言われても、私は被害者の事を「洗脳されて可哀想に」ときっと憐れむ。
人の心は見えない。だから、私も世間も普通という物差しを片手に、物事を当て嵌め、納得のいく真実を勝手に各々決め付ける。
でも私が一当事者になった時、私以外に誰が私の気持ちなど分かる、と叫びたくなるほど強い気持ちを抱く事もある。
恋愛ではない、でもこの人と一緒にいる時、空気が吸いやすい。そんな必然性のある二人の描写や、心に傷を負った人達の弱った心を描くのが本当に凪良先生は上手い。
読んで良かった。心からそう思える作品でした。

 

3.0306 カレー沢薫
モテの壁
モテ力とはなんだ!?そう、それはコミュ力(ぢから)…。
人と関わるのはとてもエネルギーがいるので、一人が楽というのはめっちゃ分かる。
でも生きるのには働いたり買い物にいったりと絶対に人と関わってしまう。
そんな時に愛嬌があると生きやすくなるというのを色んなアニメやドラマやらを例にカレー沢節が炸裂したコラム集です。
ハイローの事全く知らないけど、琥珀さんがどうかしちまった事だけは知ってるのですが、その琥珀さんの人間臭さが、そりゃ構いたくなってしまうわ!に満ちていて面白い。
完璧すぎてもダメで、ちょっとばかり隙がある方がなんとなく親しみやすいのはSNSとかやってても分かるなぁ〜と思う。
新卒で入った会社の飲み会で、若い女なら歌えて当然だろうとマイクを回されて困った覚えしかない西●カナには勝手にうんざりしていたし、彼女を支持する層とは無縁だと思っていたけど、改めて自分が敬遠してた理由と向き合ってみるのも面白かったです。
モテというと軽薄と思われがちだけど、人に好かれる為に努力する事って尊いよなと思い直すのでありました。

 

4.0312 朝依しると
Vtuberのエンディング、買い取ります。
その昔、ポケモン廃人をやっていた過去があり、めちゃくちゃ対戦が強い美少女Vtuberを筆頭とした「ゲーム部プロジェクト」という企業Vtuberを追っていた事がある。
彼らは解散してしまったが、まだまだVtuber黎明期の話で、今となっては信じられない事案が当時起きていたのだ。
その事案というのが、ブラック過ぎる労働に耐えかねた中の人=魂が続々と辞め、同じ器に新たな魂を入植させた、というもの。
配信もしていたけれど、基本的には台本形式の動画を投稿していたので運営側は扱いに困る魂を捨てて、新たな魂で再出発しても特に問題は無いと思っていたのだと思う。
結果、同じ顔なだけの知らない人に誰も着いていかず、最悪な終わり方を遂げた。
魅せるプレイさえ見れればいい、と見始めた自分でさえ何処かで愛着が湧いて、新しい魂はどうしても受け入れられなかった。
可愛いキャラクターのアバターだけでは、Vtuberとしての生は始まらない。そう私は思う。
特に彼らとやりとりをしたいと思った事はない。でも、作られた創作物ではない、中の人がいるからこその温かみに魅力を感じる。
でも中の人がいるからこそ、卒業や引退、そして炎上は必ず付き纏う。
本作の主人公達はそれぞれの方法で推しの死に向き合っていく。
主人公のやり方は正直理解できないけれど、そういう支え方もあるのだと思う。
加熱する推し活時代、推しに対しての向き合い方を考えるのにも良かったと思います。
推している自分が好きというか、推している時は推しの事しか考えなくていいから「楽」というの、正直分かってしまう。
でも、純粋に好きで、元気を貰えていて、何かしら形にしないとウズウズする〜!という気持ちも本当。
読んでいて辛い気持ちにもなったけど、考えるきっかけになった一冊です。

 

5.0321 綿矢りさ
私をくいとめて
おひとり様の、一人だからこそ外部からの嫌な刺激がない生活。でもそれを受け入れるという事は良い刺激も逃してしまうという事で…。
アラサーの主人公は、久し振りに恋の予感を感じる。けれど燃えるような情熱は全く湧かない。だけれど、この人といると穏やかな気持ちになって楽しいと思う。
積極的に「恋愛!」にはならないけれど、この人にもし違う特定の人が出来たらきっと寂しくなるだろう…という確信。
でも、この思いが成就したら、人生はまるっと変わってくるし、それがとても怖い…ってのは大人ならば共感できると思う。
この作品は変化に怯える大人の繊細な感情が、綿矢りささん特有のユーモア溢れるリズムで描かれている。
優しい気持ちになれて、尚且つサクッと読めます。

 

6.0326 倉橋由美子
大人のための残酷童話
有名な童話を再解釈して、ファンタジーだから許されていた部分を徹底的に残酷に、皮肉に、リアルに描いた短編集。
全体的にエロティックなのですが、下品ではなく官能的で淫靡。そして性特有の話としてのユーモアもある。
解説を読んで、確かに童話って徹底的に感情が排除されていてファンタジーと現実の境目が凄く曖昧で「小説」ではないのだと納得してしまった。
個人的に好きなのは人魚姫をベースにしたお話。上半身が魚で、下半身が人間…までは誰もが思いつくかもしれないけれど、最終的な混ざり方が凄まじかった。
彼女の涙という名の愛液が溢れる度にボロボロと真珠に成るのがメルヘンでありながらも、色々踏まえると残酷なのが良いです。
美も、悍ましさも、気持ち悪さも描写が一級品過ぎて、視覚的に辛かった。でも、それが最高だった。
挿絵の柄澤齊さんの作品も雰囲気に合っていて素晴らしい。

 

7.0331 柳広司
ジョーカー・ゲーム
戦時中の日本軍に属するスパイ組織、D機関が活躍する短編集。
硬派だけど、読みやすくて面白い〜!
スパイものというとアクション、というイメージだけれど本作は謎解きものです。
スパイならではの感性や生き様、また向いている人間…というか化け物の素養の部分の話とか、軍人にして軍人であらぬ思考など、スパイという生き方について知る事が出来た。
事件だけではなく、スパイ組織といえど、軍の一部なので一枚岩というわけにはいかず、面倒事が起きたりするも、そこを華麗に立ち回る本作の中心人物、結城中佐が本当にシブくてかっこいい。
現場には出てこないんだけれど、存在感が凄まじい。ベテランの風格。
色んな形でメディア化されているのも納得な位キャラ立ちがしっかりとしていて、シリーズの続きが読みたくなる。