今月は8冊読みました〜
今回読んだ中では蛭田亜紗子さんの窮屈で自由な私の容れものと、高瀬隼子さんのおいしいごはんが食べられますようにが特に面白かったです!
言葉にできない心情を、情景やその成り行きで語る感じの描写好きだ〜!
1.0602 小川洋子
掌に眠る舞台
舞台がテーマの短編集。さぞ絢爛豪華な世界なのだろう…と思ったけれど、舞台と言っても様々だ。
儚い郷愁を感じさせ、温かいけれど通り過ぎて来た物を感じては切ない「指紋のついた羽」や「ユニコーンを握らせる」。
淡々としているけれど異様で、ルールを守るという制約の所為で禁欲的な色気を感じる「装飾用の役者」が私は特に好きです。
ヒグチユウコさんのイラストが入った装丁も素敵で、小川洋子さん独特の世界観を堪能するのに最適な一冊。素敵過ぎるので飾っちゃお〜。
2.0605 矢部嵩
保健室登校
全部読み切った事を誰かに凄く褒めて貰いたい。とんでもない怪作です。
個人的に合わなかったので酷評に思えるかもしれませんが、間違いなく天才だと思う。
けれど、キツくてしんどくてゲロのミックスジュースを一気に飲まされる感じがする。いや何を読まされたんですか?これ?
本当に人にお勧めできないけど、未知の世界への扉を開きたい方に…。
第一話のクラス旅行まではよくある系のホラーね(腕組み頷き)って思ってたんですけど話が進むにつれて話が分からなくなるよ。
カジュアルに人のモツが出て来たり、はたまた歌のレッスンとしてうどんを嘔吐したりと、本当に人を選びます。
グロは大好物だから任せろ!って人もなんというか、そうじゃない不快感があるんです。
文章も謎のリズム感があってキモい。なんだろう、本当にキモいんです。下手とかじゃなくて、会話が成り立ってないのに成り立ってる事になっている(?)
すげぇもん読んだなとは思ったけど、もう二度と読みたくない…。
3.0606 村田沙耶香
信仰
新たにカルト宗教始めて儲けようぜ、と誘われる所から物語は始まる。
主人公はいわゆる原価厨で、まわりが良い良い言っているブランドの服や財布を「いや布やん」と水を差しまくり夢クラッシャーとして嫌われている。
そんな主人公が私も現実以外を見てみたいと逆にカルトに入ってみようとするが…ってお話しです。
オチがね〜好きですね〜!!こういうのにはやっぱり向き不向きがあると思う。
カルトだけまあ悪く言われがちだけど(私も正直関わりたく無いけど)ブランドも推しも、本当に極論勝手に価値を見出した何かから勝手にエネルギーを貰ってるだけだからな…。
仏壇に位牌飾るかバック飾るかアクスタ飾るかだけの違い…。
冷静になり過ぎるとマジで生きてる張り合いがないというか、虚無になるので深く考え過ぎないほうが幸せかもネ…⭐︎ってなった。
生存という短編シリーズもディストピア感マシマシで好きでした。
多分あの世界だと私はせかせか働くのも無理だし野生に還るのも無理なので真っ先に死ぬと思います。
村田沙耶香さんの考える多様性のエッセイも凄く分かるな〜と思いました。世の中は白と黒だけじゃないので、決め付ける事で後から色々と後悔しないようにしたいと思った。自分にも、他者に対しても!!
4.0612 西尾維新
美少年探偵団 きみだけに光かがやく暗黒星
西尾維新作品は中学生の頃に戯言シリーズと世界シリーズを読破済みです。ノベルスに憧れる時期ってありますよね。あれです。
性癖てんこ盛り⭐︎ですが西尾維新節は控えめで読みやすい学園ミステリだなと思いました。
キナコさんのイラストも作品の雰囲気にあっていてとても素敵。
癖の強い美少年が沢山出てくるのでとんがった美を味わいたい時にオススメ。穏やかな雰囲気なので、暴力とか流血ってテンションじゃないけど、ゆるく西尾維新を摂取したい時に良いかもです。
5.0620 米澤穂信
春期限定いちごタルト事件
今度アニメ化する小市民シリーズの第一巻。
家族に米澤穂信先生のファンがいるのでこの機会に読めやと脅されまして…。
主人公である小鳩くんと小山内さんは「小市民」を目指して高校デビューをするのですが、その都度現れる謎を解いてしまい平凡からどんどん遠ざかってしまう…というのがあらすじ。
日常系ミステリで、気軽に読める感じのお話です。メインの謎はちょっと重たいけど、ココアの謎には笑ってしまいました。ココアを作ったことがある人ほど分からないの、いいな笑
小鳩くんと小山内さんの過去が知りたくなるし、この恋人関係でも依存関係でもないけど事情を知り合っていて協力関係…ってのコナンと哀ちゃんぽくってちょっとイイナ、、、と思いました。
6.0621 米澤穂信
夏期限定トロピカルパフェ事件
丸く収まって良かった〜⭐︎トロピカル〜🏝️って思ってたら、やってくれるじゃねえの…小山内さん…!!!
小鳩くんも引く復讐鬼、小山内さん。ハードな事件すぎてこの事件をトロピカルと呼ぶのは抵抗がある。
続きがあると知った上なので終わり方にえーっ!?と振り回されています。
お話の作りというか、二人の力関係が伝わって来たり、珍しい小鳩くんが見れるシャルロットだけはぼくのものが特に好きでした。
7.0625 蛭田亜紗子
窮屈で自由な私の容れもの
女による女のためのR18文学賞出身の作家さんが好きなので以前から読みたかった。
女の生き方に関する話が5話収録されている短編集です。
『ブルーチーズと瓶の蓋』は家庭における食による支配って、飢えさせるとか逆に塩分過多でターゲットを殺す…みたいなのを想像しがちだけど、普通のメニューでも出されるものを食べるしかない側からすると確かに不自由なのかも、と思った。
子供じゃないんだから食べたいものは作るなり買えばいいじゃんってのはあるけど、先にカレーが出されたら今から餃子包みます、はまあ現実問題通らないよな…。
基本家事に関しては自分がやる側なのでその感覚が抜け落ちていた。気付けてよかった。
『教会のバーベルスクワット』は大人の恋愛小説だなあ、と思った。自分の体が変容するのは思春期で体験したけれど、そうか妊娠すると信じられないほど感覚が変わる人も多いのかと今更気付く。
『保健室の白いカーテン』は私も週5・8時間労働が出来ない体になってしまったので色々考えてヴ、、、っと辛くなった。
『森林限界のあなた』は最初当然のように男性だと思っていたけど、ある描写で気付いてから
人と人の距離みたいなものにはっとなった。
いくら好きでもやっぱり何も伝えずに愛し合うのは無理なんだなとも思ったし、愛してるの傲慢さに眩暈もした。
『コンバッチ!』は凄く生命力を感じた!
アラサーなのに好きな事で大成したいと夢見てる自分痛ェな〜、と突如虚無に襲われる事もあるんですが、少しは進んでると騙し騙し頑張ろうと思います。
何もやってない自分よりは何かやってる自分のが好き。
全体を通して気付きや、見て見ぬ振りをしている感情を揺さぶられてとても良かったです。蛭田先生の作品いっぱい読みたい!
8.0626 高瀬隼子
おいしいごはんが食べられますように
第167回芥川賞受賞作。ホッコリしたタイトルに反してエグめの人間関係が描写されていると話題だった作品。
私、め〜っちゃ好きです!この作品!!!!
日常の中にある、仕方ないんだけどやっぱりムカつく事に対する苛立ちと矛盾がきめ細かく描かれていると思う。
体が弱くて繊細な感じで、残業は体調を崩すから出来ないと自他共に認められている芦川さんを中心に話は展開する。
芦川さんの分、残った社員達は残業をするのだがキチッとしていて真面目な押尾さんは芦川さんが苦手。
そんな押尾さんは同僚で要領が良い二谷さんと
残業後ご飯を食べに行き、「芦川さんにいじわるしませんか」と提案する。
二谷はそれを了承するも、実はつい先日からなんとなく芦川さんと付き合い始めたばかり。
意地悪というとモラハラやパワハラを思い浮かべるけれど押尾さんがするのは芦川さんに任せるには微妙に難しい仕事を回す位。(あの人は出来ないから〜で配慮されていたが本来は芦川さんがやる仕事)
繁忙期に入り、殺伐とした中でも芦川さんは帰る。そこまではいいのだけれど、彼女は同僚を労るために定時で帰っては家でホールケーキを焼いて、配る。
その流れがお決まりとなった中、芦川さんの机に無惨な姿になった彼女のお手製スイーツが置かれるようになって…という話。
体壊して、休み取るのも申し訳なくて余計に病んだ経験があるので芦川さんの立場も分かるのですが、押尾さんの気持ちが痛いほど分かる。
あの人良い人だから許してあげたくなる、って側になりてぇよ。私はいつもあの人良い人だからやってくれるよね側だもん。
人に丁寧に扱われる側になりたいなぁ。
押尾さん視点だとわりとありふれた日常ものなのかな、と思うけれど二谷さんの視点が意味わかんな過ぎて怖いよ。
一見押尾さんに近い感性なのかなと思うからこそ怖いです。絶対にこの人、おいしいご飯が食べられますようになんて思ってないので。