2024年1月に読んだ10冊です。
小説以外も今年はいっぱい読んでいくぞ~!
自分の好みに偏りがちなので話題作も読みたいです。
1.0105 僕のマリ
常識のない喫茶店
作者さんが働いている「常識のない喫茶店」のエッセイ。
接客をやった事がある人なら分かるあるある集だ。
新年からモヤついた私のエピソードを聞いてほしい。 某電子決済が上手く出来なくて癇癪を起こすおじいちゃんに「お手伝いしましょうか?」って聞いたら「ぶん殴ってやろうか!」と言われ、連れの奥さんはギョッとし副店長が私を庇う為に飛んで来た。
副店長がくるとおじさんは大人しくなって、平和に会計が終わった。なんじゃそりゃ。
女で、おとなしそうで、店員って理不尽な目にめっちゃ合いやすいよな…って常日頃から思っているけれど、これは最近の中でも一番モヤついている。たぶん、殴り返されるとか1ミリも思ってないんだろうな…。
マリさんの働いている店では店員が不快に思ったら客を出禁にしていいし、お喋りや頭髪も自由。客と店員は平等がモットー。
金さえ払えば何してもいいと思ってる加害者にするサービスなんてねぇ!ってのは読んでて凄く共感出来た。それにね、店員が不快に感じる客は他のお客様も不快なんだよ。
基本このエッセイは知り合いの愚痴を文章で聞く感じの作品なので、合う合わないが分かれる上で言うけれど、お客様をランク付けする様な行為や裏であだ名で呼ぶのは下品だなって思っちゃったの…。
私はお店に行く時顔と名前を覚えて欲しくないタイプだからってのはあるかもしれないけど、絶対マリさんの店に行きたくないって思った…。ごめん。
でも、接客はもっと自由になっていいって信念には賛同します。
2.0106 三月みどり
エリート
「グッバイ宣言」でライバル役として出た綾瀬が主人公の話。
視点が変わると大分印象が変わるというか、殆どの人は多分レナより綾瀬のが共感出来る存在なんじゃないかなーと思う。
エリート=優等生は、凡人の中で優れた人で天才には決して敵わないけれど、でも「好き」を追い続ける事が生きるという事なんじゃないか?とストレートに問う話は、素直に胸に響きました。
ヘタの横好きかも知れないけど、これからも二次創作を一生続けたいし、自分の脳みその中にある妄想を出来うる限り最高の文章でお届けしたい。
3.0112 献鹿狸太郎
赤泥棒
表題作含む三作品で構成された本。
お客様にこの本あります?って聞かれて、印象的な表紙だったのとそのあらすじに絶句して直ぐに手を取った。
まず、全体を通して勢いが凄い。「お前の繊細で守りに入った心を掻っ捌いてぶっ殺してやる」っていう風に私は受け取ったんですが、この本を読んだ人はどう思ったのか気になる。
凄い攻撃的な文章なのにシニカルでリリカルでこの本を読む事で初めて知った言葉が当然ですとばかりに居場所を文の羅列の中で得ている。
若い人の作品だ、でもそれは稚拙だからではなく、若い人にしか書けないパワー…って思ったら本当に20代前半の慶應大学院生で漫画家ってなんなんだこの人!?!?この事実が後に語る作品の事を考えると残酷過ぎて泣いちゃった…。
「赤泥棒」は女装して女子トイレから使用済みナプキンを盗む主人公菊人と、女子トイレから出てきた菊人をマイノリティだと勘違いしたトランス男性である睦美の交流の話です。
読んでる途中、この作品の感想を書くのにあたって私自身のLGBT観について触れないとダメそう…って思っていたけどなんかもうそういう枠じゃ無いパワー!!!!!って感じのオチで力強いわ、ある意味って思いました。繊細なテーマな筈なんですけどね。
菊人の卑しい最悪な心情描くの上手すぎて、なんかもう嫌なのになんか分かって吐き気を抑えながら読んだので短いのに凄い読むのに時間かかった。過激なグロって訳でもないのに参っちゃったよ。
「青辛く笑えよ」は分かりやすく暴力系な毒親育ちの子が思う愛とは、な話です。
自分も子供の意見は全否定しないと気が済まないタイプの親持ちなので、愛とは相手の顔色を窺いながら築くものと思っている節があるのでトラウマを刺激されて鬱になりました。
「奇食のダボハゼ」は自分では何も創造出来ないのに、センスの良い他人を発掘しては自分のアクセサリーとしてご意見を垂れ流す高校生のお話。
ネットという匿名性が強い場においては、どっかから引用した冴えてる考えをズラッと並べとけば権威的に装えるけど、現実世界に引き摺り出された時、そいつは何の意見も持たない小せぇやつだったみたいなのはあるあるだと思う。
残酷だけど何も持たない人間というのはいて、その人達も才能に満ちた人間達と同じ道を歩かざるを得ないのが人生で…。 ってのを才能に満ちた作者が書いてるのグロテスクな現実過ぎて泣いちゃった。
嫉妬で人間はまっすぐ立てなくなるので、持っている人間は自分が上を向く事だけに注力出来て、いいよなぁと僻む自分がもう本当に嫌。
この本読んで全体的にもう本当に嫌な気持ちにしかならなかったけど、でも間違いなく読んで良かったとも思っている。おすすめです。(半ギレ)
4.0114 岩田徹
「一万円選書」でつながる架け橋
いわた書店さんと言えば、カルテでお客様の話を聞いて一万円の予算で本を選んでくれるサービスの先駆者として有名である。
私もチェーン系の本屋で働いているけれど、どうしてもチェーン系の本屋は経営会社が違くても出版社が売りたい物・ベストセラーが多く並び無個性になりがちである。
昨今、それもあってか店主がセレクトした本だけが並ぶ独立系書店が増えているのはご存知だろうか?
誰もにうっすら響くではなく、誰かにドーンと響く、そんな本を私も売り場に並べたい。胸を張って良いと言える本を進めたい。
前も言ったけど本屋は「推し活」なのだ。 いつか自分も選書してみたい。その為に良書を沢山読んで自分のものにしなくてはいけない。これからもがんばるぞ〜!
5.0116 佐原ひかり
ブラザーズブラジャー
父の再婚で出来た血の繋がらない弟は心が女性とかでは無く、ファッションとしてブラジャーを愛している。
変だとは思うけれど弟に凄く似合っているなと思う主人公との交流が、すごいぶつかり合うけれど優しくて、でもやっぱり理解してくれない人もいて心が揺さぶられました。
こういう人いるな、っていう解像度が凄まじくて特に主人公の彼氏との揉め方が高校生らしい若い傲慢さとかを感じてチクリと胸が痛んだ。
しんどい場面もありますが、主人公達に芯があるので全体的には明るく爽やかです。 痛みを感じるけども優しい気分になって、とてもおすすめです!
6.0117斜線堂有紀
愛じゃないならこれは何
不健全な関係で成り立つ恋愛小説短編集。
「ミニカーだって一生推してろ」は売れないアイドルが唯一のファンに対して凄まじい執着を見せ、ストーカーする話。
アイドルとファンという線引きを守ろうとするファン側と、自身の存在を初めて見つけ出してくれた人にズブズブと依存していく対比がとても良かった。好きです。
「きみの長靴でいいです」は誰もが憧れる女王のようなファッションデザイナーとそのナイトのごとく振る舞う写真家の、夢みたいに美しい世界が写真家側の突然すぎる結婚報告によって崩れる話。
人間の生活は夢ばっかりじゃ無くて現実があって、結婚はその現実でするもので…みたいなお伽話なんてないんだよ!って説教をされてるようで泣いちゃった。
「愛について語るときに我々の騙ること」&「ささやかだけど、役に立つけど」 男2・女1の組み合わせの仲良し3人組の関係が、時を経て変わっていく話。
最初は凄い少女漫画的だな!と思ったけれど、それぞれが求める関係の為に裏で歪な恋人関係になったりと、好きの為に傍目から見るとおかしな行動をとるのが感慨深い。でも誠実な愛なんだよな。
「健康で文化的な最低限度の恋愛」は片思いする人間と会話するために、全く興味がない相手の趣味に合わせ続けた先にあるもの、って話。
好きな人間の為に合わせるってのはあるあるかもしれないけれど、この主人公はかなり覚悟が決まっている。恋に溺れていく度に沈んでいく自我の描写がスゲ〜怖かったです。
一風変わった恋愛小説が読みたいって方にとてもおすすめです。
7.0122小池陽慈
ぼっち現代文 わかり合えない私たちのための<読解力>入門
登場人物の気持ちを考えなさい、を文法の説明と共に教えてくれる本。
この本の中で紹介されている荒井裕樹さんの「まとまらない言葉を生きる」って本の「きっと、人には、人の体温でしか温められないものがある。その体温を、単なる「温度」として捉えるのか、それ以上の「何か」として捉えるのか。この「何か」として受け止めようとする力が「文学」なんじゃないか」って一文に凄い感動しちゃって、原書も読まなくてはと思いました。
感情を表す言葉や表現は沢山あるけれど、その向こうの言葉で表せない何かって必ずあって、それをどうにか一番近しい衝動で表すけれどそれが伝わるのって奇跡ですよね。 文学というか、本って本当に対話だよな…。
8.0124 逢沢大介
陰の実力者になりたくて!
アニメの影響もあって爆売れな本。
学校にテロリストが突然襲撃してきて、突如活躍する俺…!を世界規模でやるというストーリーで、皆大好き中二病を余す事なくコミカルに描いている。
本の装丁的にシリアスなお話なのかな、ってタイトルしか知らない時は思ったけれど基本中二病に取り憑かれている主人公がそれっぽい事言うとマジでそれで皆尊敬しちゃう…///って感じのギャグ全振りなお話です。
有能お姉様系ヒロインが好きな人ととにかく笑いたい人にオススメ。 笑いのセンスが合わないとこういうタイプの作品は厳しいと思いますが、私は好きです。
9.0127 大田比路
政治的に無価値なキミたちへ
この本は早稲田大学の政治学の講義を文章で受ける事が出来る本である。
まず前置きが2つあって、私は政治初心者なのでもし極端すぎる思想を間違って抱いていたら教えて欲しいという事、
そして新卒で入った会社がブラックで心身共にぶっ壊した事があるという人間の立場から見た現代日本の疑問点について考えた事を話します。
この本、一番最初にチャート的なものがあるんですよ。普段どれだけ政治に無関心でも気になるトピックに対して○か×かでざっくりとした政治思想が割り当てられる。
私は共同体主義(初めて聞いた〜!)なんだって。 個人が富む為には集団も同じ様に富まねばならない、って考えに凄く共感出来て皆もこれでしょ!って思ったら日本だと保守派が6割以上らしく初っ端から異端か…!?って頭抱えてしまった。
世界と比べて日本の生活はある程度の縛りがある故に良いところもあるけれど、やはり不寛容かもしれない、とうっすら思っていた事のデータ等も載っている。
で、この本を読んで思ったのがやっぱり少子高齢化とか不景気なのはやっぱり日本の富裕層が労働者を人として扱ってないから、一度壊れたパーツは直んないからそこから壊死がどんどん広がっているのかなあって。
貧乏人は努力不足って切り捨てるのは簡単だけど、所詮首輪自慢というか、やらなきゃいけない汚れ仕事は絶対誰かに回ってくるんだから最下層が死んで最終的に金の首輪を付けた貴方がやるのかも。って思った。
緩やかな資本主義は健全な競争を生むのでいいと思うけどなんだかコロナ後あたりから凄く中流世帯の中でも経済格差的なものを感じる様になって、やっと今回私は政治学というものに触れる気になった。
政治について話すとちょっと前までヤベー奴扱いだったけどあまりの不景気故に皆政治に関心が芽生えた気がする。
近年は日本の勤労こそ美徳って精神に僅かながら革命が起きていると思う。心のゆとりが持てる賃金と余暇があれば日本は頑張れるんじゃないかな、と理想主義者が言ってみる。
もう手遅れの段階とかその為の金は!?とか言われたら分かんないし、初心者考えで色々間違ってたらごめんなさい。 でも、明日を生きたいと思える暮らしにしないと、何もかもが上手くいかないと思う。
10.0130 帚木蓬生
ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力
フォロワーさんが読んでいて、白黒付けたがりでメンタルよわよわな自分向きだな…と思い読んでみる事に。
日薬…月日が経つと自然と癒える力
目薬…人の目があると見守られている・期待されていると奮い立つ力
という考え方と、ネガティブケイパビリティ=気分が落ち込んでも持ち堪える力という3点を強く意識出来れば負の思考のループから確かに抜け出すことが出来そうだなと思いました。
弱ってると目先の事しか考えられなくなって、余計に変な事を言ったりして事態を悪化させがちなので希望のある未来のイメージを待てるようになりたい。
正直俺馬鹿だからよぉ…わッかんねぇよ…!!って思う事が割とあったり(源氏物語のくだりとか)具体的に心が強くなる方法を教えてクレメンス、、、と消化不良な所もありました。
でもプラセボとか医学的事実に基づいたお話はとても面白かったです。